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コラム

孤高の集団

最近の人気ドラマ「のだめカンタービレ」で、静かなクラシックブームともいわれているが、これを機にもっと多くの人に西洋音楽を聞いてもらいたいというささやかな思いもあって、今回は私の大好きなオーケストラについて紹介したいと思う。

オーストリア。人口わずか800万人という小さな国の首都ウィーンに、「ウィーンフィルハーモニー管弦楽団」(以下ウィーンフィル)という世界中の音楽ファンに最も人気のあるオーケストラがある。NHK正月番組でおなじみの「ニューイヤーコンサート」を演奏している団体である。

昨今のクラシック界も他の業界と同じように、世界的なインターナショナル化が進み、特にアメリカのシカゴ交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ボストン交響楽団、ドイツのベルリンフィルなどにいたっては、世界中の精鋭を集結した、まさに「多国籍軍」オーケストラである。簡単にいえば野球のメジャーリーグのオーケストラ版みたいなものだ。野球と同様その中に数多くの日本人が在籍しているのは誇らしいことであるが、ともかくその精密機械のような一糸乱れぬアンサンブル(合奏)能力は、技術的には世界最高レベルといわれている。これらの「多国籍軍」オーケストラに対してウィーンフィルは、技術的には目だって見劣りすることも、勝っているということもない。それでも世界一愛される「孤高のオーケストラ」として不動の地位を築いているのは何故だろうか?それは、他のオーケストラには真似できない個性(自分たちのスタイルへのこだわり)をもった集団であるところにおおきな理由がある。その特徴をいくつか紹介したい。

  1. 運営組織について
    楽団員はウィーン国立歌劇場管弦楽団から選ばれたメンバーであるが、団員による自主運営で、音楽監督や常任指揮者をおかない。演奏についても長年培ってきた独特な音色、音楽性へのポリシーがあり、指揮者がどう振ろうが、ある最低限のポリシーを曲げることはない。(例えば、ブラームスの音楽はこうあるべき、といったようなもの)したがって、指揮者は、ある程度団員の自主性に委ねなければこのオーケストラを統率できない。
  2. メンバーは主にウィーン音楽大学出身である。
    メンバーの大半がそうであり、音楽へのアプローチ(考え方)が統一されている。それによって、全体の音色が技術的のみならず、芸術的な統一感をもたらす。世界中から人を寄せ集めたが故に、音色に個性のない「多国籍軍」オーケストラとの大きな違いだ。
  3. 女性は登用しない。
    これは差別ともとられる恐れがあるが、最近は女性も少しずつ登用されている。
  4. 使用する楽器について 数多くの楽器がなにかしら通常のものと異なる特性をもっているが、ホルン、オーボエにいたっては、形状も通常のものと大きく違い、ウィーンフィル独自の仕様となっている。ホルンは非常にまろやかな音で、オーボエは、なぜかチャルメラの音に近い。余談であるが、これらの楽器については、日本が誇るYAMAHAがサポートしている。弦楽器は、ほとんどがオーストリアの同じ工房で作成されたものを使用。

このように他に類を見ない個性的なオーケストラは、「自分達の個性をもった一貫性のある音楽」をもって、世界中の音楽ファンを魅了しているのだ。その美しい音色は、どんなに上手いオーケストラでも再現できないといわれている。また、その輝きを一世紀以上も持続しているのは、大切な伝統、個性、地域性を重んじながらも時代に合わせて少しずつ改革し、自分たちにしかできない音楽をつくるという「長年受け継いできた組織としての意思」があるからだと私は思う。ものすごい速さで進歩していく我々のIT業界においても、他のベンダーと同じように最先端を追いかけることは必須の課題であるが、組織として一体感をもち、他社と差別化できるだけの「個性」をもつことも重要なファクターのひとつだと思う。我々が見習う部分も大きい「孤高の集団」をこれからも注目していきたい。

2007/02/07 Posted by H.M.