

SPECIAL
地域の未来とIT 2 対談:紀陽銀行×KJS
両社の連携で挑む
地域のDX推進
紀陽銀行とKJSは、同じ目線で、地域企業のIT課題を見据え、
それぞれの強みを生かした連携を通して、地域のDX推進に挑んでいる。
実際、どのように協業し、どのような成果を上げているのか。
その最前線で奮闘する、紀陽銀行とKJSの担当者に語り合ってもらった。
MEMBER
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紀陽銀行 ソリューション戦略部 ITコンサルティングデスク
越野さん
▶2016年入行/現代システム科学域卒
入行後、支店の融資相談課(1年)、営業課(1年)、融資部の経営サポート室(2年)を経験。そのなかで、お客さまの中長期にわたる経営改善に向けたIT活用の重要性に気づき、自らの意志でKJSの長期トレーニー(半年間)へ。ITソリューションの基本を習得後、現部署に異動し、現在、ITコンサルティングを担当している。
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紀陽情報システム ソリューション推進部
岡本さん
▶2007年入社/システム工学研究科修了
入社後、金融システム部を経て、複数の企業との協業プロジェクトに従事。さまざまな地域金融機関やベンダーと接点を持ち、紀陽スマートアプリ「キヨスマ!」など、数多くのシステム開発に携わる。2023年より現部署に異動し、現在、プロジェクトマネジメントする立場で、ITコンサルティング~システム開発を担当している。
THEME #01
地域のDX推進に向けた
それぞれの役割と思い

Q両社でどのように協業しているのか? また、それぞれの役割を教えてください。
越野 協業に先立って、私がまず行うのは、紀陽銀行のお客さまにヒアリングすることです。それ以前にお客さまからお話を聞いているのは、一番フロントにいる営業店の担当者なのですが、そのなかでもITに関するところについては、私たち本部の担当者が、お客さま先に直接伺い、より詳細な課題を深掘りします。その深掘りした課題に対するソリューションを提案する段階で、KJSの岡本さんに相談を持ちかけます。
岡本 相談を持ちかけられた段階で気をつけているのは、越野さんのお話から、お客さまが悩んでいる課題やニーズをしっかり把握することです。そこからは、紀陽フィナンシャルグループのIT部門を担うKJSとして、越野さんと一緒になって、DX化やデジタル化に向けたお客さまのニーズや経営課題を分析して、具体的なソリューション内容を練っていきます。
越野 私もお客さまからヒアリングした課題を、岡本さんに過不足なく伝えるよう努めています。それと同時に、私が提案したい内容を伝えて、それを一緒にブラッシュアップしていき、お客さまのニーズに合った提案をつくり上げます。
岡本 お互いが提案したいこと=WILLは、屈託なく伝え合っていますね。

越野 また、WILLを伝え合う前に、岡本さんとじっくり話し合うことも。それは、お客さまとのやりとりのなかで、課題について言葉にできていない部分に関してです。
岡本 そうなんですよね。たとえば、「DX推進に取り組みたい」と要望されていても、それ以前にデジタル化が実現できていないお客さまもいます。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略。いまの業務をどう変革していくかを見据えつつ、デジタル化を実現したうえで、有用な情報を蓄積していかないと、そもそもDX推進には踏み出せません。このあたりのことをお客さまにわかる形で言語化するというのが、第一段階として、二人でやっていく作業ですね。
越野 そのうえで、DXとは何か(※1)やその必要性を、お客さまに理解していただくことも重要。それをお客さまにわかりやすく伝えるにあたっては、経験豊富な岡本さんを頼りにしています。岡本さんとは所属は異なりますが、先輩後輩という感じでやりとりさせてもらっていますね。
岡本 そうしてお客さまの経営課題に対する出口戦略として、それぞれのお客さまの状況に合ったDX、もしくはデジタル化の戦略を考えて、ソリューション提案を行っていく。その提案内容についてお客さまとの合意が得られたら、KJSがソリューション内容に応じたシステム開発や保守を提供していきます。
越野 お客さまの課題に応じたソリューションを考える、最上流の部分から、紀陽銀行とKJSがしっかりタッグを組むことは、お客さまに対して、より効果的なIT投資戦略やDX・デジタル化戦略を提案するうえで非常に大きな力になっていると思います。
※1 DX:企業がデジタル化を「手段」として、業務プロセスを改善していくだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも変革し、競争上の優位性を確立すること。したがって、デジタル化して得られた利点を活用し、新たなビジネス・収益につなげてはじめてDX達成となる。
THEME #02
ある不動産企業への
ソリューションを振り返って

Qお二人で取り組んでいるDX推進事例を教えてください。
越野 紀陽銀行の重要顧客である総合住宅メーカー、フジ住宅(※2)さまへの取り組みはまさに現在進行形です。同社が抱えていた大きな課題は、基幹系業務システムが30年前に開発したものであること。そのためデータの一元管理、利活用が十分にできていない状況に加えて、クラウド化できない、WEB利用できないなど、現在のデジタル時代にはマッチしないシステムになっていました。そのようななかで、システム化計画書をつくるところからDX推進プロジェクトをスタートさせました。
岡本 越野さんから、そうしたお客さまの現状を伺って、KJSが導入提案してシステム開発したソリューションの一つが、フジ住宅さまで基幹系システムと位置づけられている工程管理システムです。KJSが新規システムを開発・導入する以前、同社では、レガシーな基幹系業務システム上の各工程情報のもと、多くの部署の人手を使ったアナログな手続きを介して工程管理をするという、決して効率的とは言えないシステム運用がされていました。
越野 いろんな関係部署が絡む複雑な工程管理業務の詳細やその課題感については、岡本さんとともに、フジ住宅さまのシステム室の担当者の方と綿密に打ち合わせを重ねていきましたね。そうしたなかでスピード感を持ってお客さまのあるべき姿を描くことができ、その結果、最適なソリューションを提案できました。

岡本 おっしゃるとおりです。新たな工程管理システムでは、複数の開発現場(物件)の工程進捗状況を俯瞰表示し、工程の進捗管理の見える化を実現しました。また、個々の開発現場における工程は、担当部署が自部署の責任で入力できるようになったため、担当工程の前工程の予定や、関係工程の状況がリアルタイムで把握可能になりました。1年間かけて開発したこの工程管理システムはいま、お客さまに使っていただいており、好評を得ています。そして初期開発後も、戸建て開発工程管理だけでなく、マンション工程管理などの新機能提案を経て、継続的に追加開発をご発注いただいています。そうしたなかで、適用される業務範囲や利用者範囲が広がり、よりご満足いただけるシステムとなっています。ただ、これはフジ住宅さまのDX推進の第一歩に過ぎません。
越野 そうですね。非常に幅広い事業を手がけ、複数の連結子会社も擁するフジ住宅さまには、ITを活用して解決していくべき経営課題がまだまだあります。今回の工程管理システムの成功を礎に、これからも一緒に、お客さまの思いに伴走する形でさまざまなソリューションを提案していきましょう。
岡本 お客さまとの関係性も深まっていますし、単なるシステム会社ではなく、フジ住宅さま内のシステム部門になったつもりで、引き続き、使命感を持って対応させていただきます。
※2 フジ住宅:大阪府を中心に高い顧客満足を得ている総合住宅メーカー。分譲住宅、土地有効活用、住宅流通、賃貸&管理など、広い事業範囲で独自のノウハウを持ち、事業間で相互に補完するバランス経営を行っている。また、フジ・アメニティサービスなどの複数の連結子会社と連携し、土地仕入れから戸建て引渡後のアフターに至るまで一気通貫での住宅に関連する商品・サービスを持っている。

THEME #03
今後のビジネス戦略と
突破すべき課題

Q今後、地域のDX推進をどう拡大させていこうと考えていますか?
岡本 先ほどご紹介したフジ住宅さまのDX推進事例は、地域企業に向けたDX支援のモデルケースになり得ます。実際、他のお客さまからも「フジ住宅さんと同じように、当社も支援してほしい」といった引き合いが来ています。
越野 私も同じです。当行のIR資料を見たお客さまから、「ITコンサルティングをお願いしたい」という声が届いています。フジ住宅さまのようなお客さまに関しては、これからKJSとタッグを組みながら、横展開していきたいと強く思っているところ。これは、KJSの協力なしでは成し遂げられないと思っていますので、これからも密な連携をよろしくお願いします。
岡本 もちろんです。ITコンサルティングから始まり、ソリューションの提案、必要に応じた具体的なソリューション提供やシステム開発まで一気通貫で担うのがKJSの使命ですから。
越野 お客さまへのITコンサルティングの拡充による地域DX推進は、中期経営計画の施策の一つです。紀陽フィナンシャルグループで、引き続き地域DXの推進を行い、地元和歌山・大阪に貢献していきたいですね。

岡本 地元企業のDX推進を拡大していくなかで、お客さま企業の事業が進化・拡大し、それによって紀陽銀行の融資機会も増え、KJSの成長にもつながる。そんなwin-win-winの関係性が構築できれば、地域の活性化にも大きく貢献できますね。
越野 そうですね。それを実現するためには、地元企業のお客さまに対して、システム投資、デジタル化、DXの必要性をより周知しなければならないと考えています。
岡本 それと同時に、紀陽銀行-KJS連携による地域のDX推進の取り組みの継続に向けて、さらなる要員や体制の整備、ソリューションメニューの拡充と標準化が必要になります。
越野 関連IT会社と連携することで、こうした高度なITコンサルティングの価値提供ができるのは、紀陽フィナンシャルグループとしての大きな強みだと感じています。
岡本 そうですね。金融機関のメインシステムである勘定系システムの開発を一つ見ても、グループ内ではなく、大手IT会社に大きく依存している地域金融機関が多い状況です。一方、紀陽銀行は自グループ内で勘定系システムや情報系システムを問わず、システム開発の自営化を推進しているからこそ、ITの知見も蓄積され、お客さま企業にも納得感をもってITコンサルティングの価値を提供できるというわけです。突破すべき課題はありますが、これからも、一緒に地域のDX推進に力を注いでいきたいですね。

地元企業のこれからの成長の鍵を握るIT。
その活用が、地域の豊かな未来へとつながっていく。